当財団はシーティングの普及とレベルアップをめざして2016年2月に設立されました。定款にも掲げているように「超高齢化社会の我が国の未来にはシーティングが不可欠であり、これを普及させることで、障がいのある高齢者と障害児者の二次障害を防止し、残存機能の最大限の発揮を可能にし、自立の支援を目指すこと」を目的としています。

「シーティング」とは、自分で座りなおすことができない方に対し、目的に合った適切な座位を提供することです。疾病や加齢などで「座り」に支障をきたすことが心身へさまざまな悪影響を及ぼし、二次障害を引き起こすことはよく知られています。快適に座ることができれば、呼吸機能だけでなく消化器官も正常に働きます。テレビを見ることやコミュニケ―ションもスムーズになり、誤飲・誤嚥を防ぎ、ベッドでつくられた褥瘡も治癒でき、健康寿命を延ばすことができます。もちろん医療費の削減にもつながりますが、なによりもご本人のQOLを一気に高めることができます。

「寝たきりゼロ作戦(1989年)」によってベッドで寝かせきりの方は激減しましたが、病院や施設では立って歩けなくなった方の多くは車椅子に座らせられています。車椅子は歩けない人を安全に移動させるための用具として開発されましたが、わが国では食事の場面でもそれがそのまま使われています。また、病院ではベッドの背を起こして食事させることも多く見かけられます。食事には不適切な姿勢です。不良な座位は誤嚥を引き起こし肺炎の原因になります。それを予防するためにも適切な座位姿勢を保つための用具が必要です。

生活の場(家庭)で椅子が使われだすのは、テレビ普及(1964年の東京オリンピック)の後と言われています。わが国では、それまでは直接床に腰を下ろす生活でした。椅子に座って食事したりくつろいだりする生活はわずか60年ほどの歴史しか持っていません。

椅子は座った時に身体を支える機能を持っています。「背もたれ」や「肘掛け」と呼ばれていますが、英語圏では「バックレスト」・「アームレスト」と呼ばれ、その機能も明確です。すなわち「背休め」・「腕休め」の装置だということです。ちなみに椅子の「椅」が常用漢字表に入ったのが2010年です。今では椅子は身近な用具ですが、私たちは椅子の適切な使い方をもっと学ばなければなりません。

最近は「シーティング」の大切さが制度にも反映されるようになってきています。当財団の提案が関係者の協力を得て、2017年には「シーティング」が疾患別リハビリテーション料として算定ができるようになり、2021年には訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、介護老人保健施設、介護医療院、介護療養型医療施設訪問リハビリなどで「シーティング」が介護報酬として算定ができるようになりました。

私たちは自力での座位が困難になった方に車椅子だけでなく生活場面に応じた適切な椅子を、年齢に関係なく誰もが利用できるようになる社会をめざしています。

2026年4月
一般財団法人日本車椅子シーティング財団 代表理事 光野有次
経歴