医療療養病棟でのシーティングを考える
フォーラム・ディスカッション
日時:2016年10月10日(月・祝)
場所:私学会館(アルカディア市ヶ谷)
問い合わせ先:一般財団法人 日本車椅子シーティング財団
メールアドレス:info@wheelchair-seating.org
一般財団法人日本車椅子シーティング財団
代表理事 廣瀬秀行
事務所:東京都江戸川区南篠崎町 2-16-2 電話:03-5666-4805

一般財団法人日本車椅子シーティング財団は、シーティング技術の普及により我が国の高齢者
並びに障がい者の自立支援と介護軽減を実現し、医療費・薬剤費・介護費等の削減を実現することを
目的として平成 28 年 2 月に発足いたしました。シーティングとは使用者に合わせて車椅子やバギー
も含む介助用車椅子、電動車椅子に、ティルトやリクライニング機構、座位保持装置、車椅子クッシ
ョンを含む機器を選択して、最適な状態に設定・調整・使用方法の指導等に対応する技術です。
このシーティング技術により寝たきりであった障がい児者や高齢者が社会で生活することを可能
とし、介護軽減や就労・就学の可能性を高めます。
当財団は、超高齢化社会の我が国の未来にはシーティングが不可欠であり,これを普及させるこ
とで,障がいのある高齢者と障がい児者の二次障がいを防止し、残存機能の最大限の発揮を可能と
し、自立の支援を目指してまいります。
代表理事挨拶
本財団は車椅子シーティングの普及を目指すため、基礎の部分を確立することが現在の財団の使
命です。その為に、議連連盟と協調する(Policy)、国際車椅子シーティングシンポジウムなどからの
情報交換(International)、ばらばらに動いていた国内各団体の協調(Cooperation)、そして科学性
促進(Science)を図りながら、効果のある障害者児や高齢者支援が教育を通じて日本全国に等しく普
及していく一助になるように進めていきたいと考えております。
今年度は組織事務機能の強化と同時に以下の事業を当財団の体力に合わせながら実施していく所
存です。
 「シーティングで自立支援と介護軽減を実現する議員連盟」を通じての政策の提言などの役割。
 国際車椅子シーティング・シンポジウムの日本開催を目指し、その活動を通じての世界標準のシ
ーティングを基本とした専門家教育の提供。
 車椅子や車椅子シーティングに係る医療・福祉、工学、そして製作・供給事業者団体等の連携を
目的とした合同シンポジウム開催及び車椅子シーティングのそれら団体の情報収集と発信。
 車椅子シーティングに関する論文賞設置または研究費、発表渡航費の補助、そして開発費の補助
など科学性獲得の奨励、そしてそれらの解説。
 特に現在シーティングが普及していない自動車上、電動車椅子、スポーツそして慢性期や急性期
など新規分野開拓に向けてシンポジウム等の開催や情報発信。
 これらを賛助会員やこの活動に興味を持たれている皆様に情報をお伝えするよう、ホームペー
ジや車椅子シーティングについてのパンフレットなどの作成を行います。
1
プログラム
第一部 講演 13:30~15:45
1.財団紹介と医療療養病棟のシーティングの方針(5 分)
代表理事 廣瀬 秀行
2.医療療養病棟の現状とシーティングの可能性(15 分)
永生病院医師 野本 達哉
3.Hoffer・ティルト等シーティングの説明(5 分)
理事 木之瀬 隆
4.定山渓病院の医療療養病棟でのシーティング(30 分)
定山渓病院 PT 河野 伸吾
5.永生病院の医療療養病棟でのシーティング(30 分)
永生病院 OT 岩谷 清一
6.永生病院の医療療養病棟での看護体制(30 分)
永生病院看護師 WOC 串田 真紀
第二部 フォーラム・ディスカッション 16:00~17:00
講師とフロアーから医療療養病棟のシーティングの在り方について方針を検討します。
2
医療療養病棟でのシーティングを考える
フォーラム・ディスカッション
一般財団法人日本車椅子シーティング財団 代表理事 廣瀬秀行
同 理事、NPO 車椅子シーティング・コンサルタント協会 理事長 木之瀬隆
一般財団法人日本車椅子シーティング財団では、はじめて医療療養病棟でのシーティングをテーマに
フォーラム・ディスカッションを開催いたします。医療療養病棟はほとんどシーティングの介入がな
く、そのため介入前後での変化が出やすいといえます。今回、先駆的に医療療養病棟でシーティングを
実施している2 病院の医師、理学療法士、作業療法士、看護師にその可能性について報告していただき
ます。またシーティングがどこまで患者に有効なのか、またそれを実施対応するためには、どのような
車椅子機能や知識・技術が必要なのかについて解説する予定です。
医療療養病棟患者は重度者であり、重度な多種な医療状態に対応ができることが必要になります。今
までそれはベッド上で行われていましたが、シーティング技術を使用した車椅子上に対応を移らせるパ
ラダイム変換が必要になります。
永生病院や定山渓病院ではこれを経験で解決してきたと思っております。
今回はその知識を広めていただくと同時に、科学性を持って対応できるように進めていくことが必要で
あると思っております。
なお、デスカッション・フォーラムとした理由は、シンポジウムsymposium が一緒に syn-飲む
posis の意のギリシア語 symposion のラテン音訳。現在では饗宴の意味と,なごやかな雰囲気のなかで
行われる学問上の討論会もしくは雑誌などで特定の問題に関して数名の者がそれぞれの見解を表明する
誌上討論会の意味とがある。一方、「議論の決着を付ける」のがフォーラムと言えそうです。ただし、
結論を出さないフォーラムもあるので、一概にフォーラムなら絶対に結論が出るとは限りません。た
だ、シンポジウムよりは、議論を決着させることが重要視されていると言えます。(wwwより)
よって、総合討議での本フォーラムデスカッションでは、医療療養病棟でのシーティングを次に進め
るため、課題を取りまとめると同時に、今後につなげる議論にしていくつもりです。

背景
現在、医療療養病棟での車椅子シーティングを実施するには困難を極めています。まず、診療報酬上
の対応がないこと、次にリハ専門職の車椅子に対する知識がないことが挙げられます。これは二つの問題
を生みます。一つはシーティング関連機器を備えることが出来ないこと、そしてそれを適合していく時間
が取れないことが挙げられます。二つ目は、もともとベッド上寝たきりですので、それを起こすことは看
護・介護サイドにとって余分な手間を増やすことになります。
今回、河野先生と岩谷先生は10 年以上シーティング・コンサルタント協会で車椅子シーティングにつ
いて研鑽を積まれていると同時に、褥瘡認定師(褥瘡学会)をとり、褥瘡に非常に臨床経験をもっている
方です。その方が、このようなギャップを乗り越えて来たのかを知る機会でもあります。

医療療養病棟の現状とシーティングの可能性
永生病院 TQM センター長/医療技術部長 野本達哉
療養病床とは、主として長期にわたり療養を必要とする患者を入院させるための病床であ
る。現在のところ、医療保険適用と介護保険適用のものに分かれて適用されており、その
中で医療保険適用の療養病床は、密度の高い医学的管理や積極的なリハビリテーションを
必要とする者が適用となる。
利用者は75歳以上の高齢者が大半を占める。また、医療区分は2、3が半数以上を占
め、ADL 区分は3が半数以上を占める。つまり、「医療行為を必要とする全介助の高齢
者」が多い病棟といえる。
このような状況の中、問題となるのは廃用症候群である。廃用症候群とは、疾患などのた
めに活動性や運動量の低下した安静状態が続くことで、全身の臓器に生じる二次的障害の
総称である。筋萎縮、骨粗鬆症、関節拘縮など筋骨格系の障害や、心機能低下、 起立性
低血圧、深部静脈血栓症、摂食・嚥下障害、褥瘡、便秘、尿路感染症、抑うつ状態、高次
脳機能障害などを認める。
予備力の少ない高齢者は、軽度の侵襲や短期間の安静臥床でも廃用症候群を認めやすい。
また一度低下した機能の回復は簡単ではなく、特に高齢者では様々な二次的障害が合わさ
り、臥床状態から離れることが難しくなる。このため、不要な安静臥床を避けて、早期離
床を進めることが重要である。
しかし実際は半数以上が寝たきり度 C となっており、この背景には病状によるもののみな
らず、医療スタッフの離床への理解不足、スタッフ間でのコミュニケーション不足なども
考えられる。離床をしないことで廃用症候群がすすみ、さらに離床困難になっていく。そ
の結果、介護量や医療費の増加を引き起こす。
こうした状況を改善するために、目先のコストや介護負担を考えるのではなく、まずは患
者の利益を考えることが重要である。そして離床に向けたアプローチを行っていくが、シ
ーティングを行うことで、質の高い離床、そして介護量の軽減も期待できる。
またシーティングはできる限り多職種が参加することが望ましい。多職種が参加すること
で、職種間のコミュニケーションも良好となり、情報の共有化も容易となる。 その中で
医師は、チームリーダーとして公平な視点でチームワークを保つことが必要である。
4
限られた資源、人材の中で、介護量の多い患者を離床させることは簡単なことではない。
しかし、シーティングを通して多職種が離床に関わることは、不要な臥床および廃用症候
群の発生をなくし、患者にとっても医療者にとっても良い結果をもたらすと言える。
5
シーティングとは?
Hofferの座位能力分類
車椅子の機能 ティルト・リクライニング
一般財団法人日本車椅子シーティング財団 理事
日本シーティング・コンサルタント協会 理事長 木之瀬 隆
一般財団法人日本車椅子シーティング財団
代表理事 廣瀬秀行
シーティング:Seating
• シーティング:座位保持
• シーティング技術:
発達障害児・者や障害者、高齢者が
椅子・車いす、叉は座位保持装置を適
切に活用し自立的生活を築くための支
援と二次障害の予防、介護者の負担
を軽減する技術
6
ICF(国際生活機能分類)の相互作用
健康状態
(変調または病気)
心身機能
身体構造
活動 参加
環境因子 個人因子
シーティング
環境因子
足底
座面
アームサポート
バックサポート
ヘッドサポート
シーティングの目的
(臥床した状態 → 座る姿勢へ)
Ⅰ身体に対する効果
①心肺機能の改善
②消化、排泄機能の改善
③傍脊柱筋の筋力維持・強化と姿勢制御
④二次的障害の予防(変形、拘縮、褥瘡)
⑤摂食・嚥下の改善
⑥目と手の協調性、上肢機能の改善
7
3
Ⅱ ADLに対する効果
⑦食事・作業活動の拡大
⑧コミュニケーションの拡大
⑨介護が容易化
⑩社会参加、学校、就労
シーティングの目的
1.手の支持なしで座位可能 30秒以上、2.手の支持で座位可能 30秒以上
1.手の支持なし 2.手の支持あり 3.座位不能
Hofferの座位能力分類(JSSC版)
古賀洋、他:Hoffer座位能力分類(JSSC版)の評価間信頼性の検証.
リハビリテーション・エンジニアリング.24(2):92‐96,2008.
8
4
リクライニング式車椅子
• バックサポートの
角度のみ変えられる
• シーティングでは
使わない機能
• せん断応力がかかる
ティルト・リクライニング機能
ティルト
リクライニング
ティルト式:背座角が固定のまま後方に倒れる
リクライニング式:バックサポートが後方に倒れる
制度用語:リクライニング・ティルト式
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定山渓病院の医療療養
病棟でのシーティング
定山渓病院 リハビリテーション部 理学療法科
河野 伸吾
シーティング・コンサルタント
生活環境支援系専門理学療法士
福祉用具プランナー
福祉住環境コーディネーター2級
定山渓病院
 北海道札幌市
 386床
 医療療養病棟[292床]
 特殊疾患病棟1(一般病棟)[94床]
 平均在院日数:約374日(`16年1月現在)
10
病棟種別
1A 1B
5A
3A
2A
5B
3B
2B
特殊疾患
療養病棟
医療療養病棟
入院基本料1
医療区分2、3が8割
看護配置20:1
医療療養病棟
入院基本料2
医療区分2、3が5割
看護配置25:1
1病棟病床数は47~50床
疾患割合(2016年)
N=281
11
年齢層(2016年)
0~
19
0%
20~29
1%
30~39
2%
40

49
5% 50~59
10%
60~69
19%
70~79
23%
80~89
28%
90~99
12%
100~
0%
N=281
障害高齢者の日常生活自立度(2016年)
軽度 重度
N=281
12
座位能力分類(JSSC)
1:手の支持なしで
座位可能
3:座位不能 31%
47%
2:手の支持で
座位可能
22%
N=282
当院のリハビリテーション
「全ての患者さまにリハビリテーションを!」
個別訓練
シーティング
終末期
リハビリテー
ション
摂食嚥下
集団訓練
その人らしく
廃用症候群
改善・予防 社会的交流
13
スタッフ数と処方数
PT:27名
OT:32名
ST:14名
助手:1名 合計74名
スタッフ数
(2016年4月1日現在)
処方数(2015年平均)
当院のシーティング
 2001年5月よりシーティング・クリニック 開始
 患者さまにより良い車椅子・クッションを提供することを
目的に、年間30件前後のシーティングを実施
 現在までに約440件の車椅子・クッションを処方してきた
 きっかけは、脊髄損傷患者の褥瘡治療と活動性の維持を
両立することを目的とした取り組みであった
 抑制廃止の効果などを確認しながら、高齢者のシーティン
グに取り組んでき た
 現在はシーティング係を中心に活動(役職者1名、クリニッ
ク担当3名、業者担当2名:PT4名、OT2名)
14
シーティング・クリニックの流れ
<クリニックA:車椅子・クッションの検討>
各評価の報告 作製手段・自己負担の確認
参加者:患者さま、ご家族、車椅子業者
Dr、Nrs.、PT、OT、ST、MSW
デモ用車椅子試乗、座圧測定、ご家族への確認
<クリニックB:採型>
使用する車椅子・クッションの決定
評 価
シーティング関連物品
車椅子(11種類、内電動車椅子5種類)
クッション(24種類)
その他シーティング関連備品(11種類)
15
シーティング・クリニック開催件数
車椅子種類
16
車椅子使用状況
14% 52% 19% 11% 4%
・入院患者の86%が車椅子乗車
をしている
・リクライニングの割合が減少し
てきている
・本人用35%、病院備品65%、
レンタル1台
3 %:歩行自立
11%:その他
・ターミナル
・全身状態悪化状態
・本人拒否
・呼吸状態不良
・循環動態不良
・精神状態不良
N=279
クッションの使用状況
14% 3% 73.8% 74% 2%
本人の希望
患者さまの拒否がなければ、車椅子には必ず
クッションが使用されている
N=250
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シーティング相談
 車椅子乗車をしているが、補装具申請が難し
い患者さまで、現在使用している車椅子が適
合していない、もしくは適合しなくなってきてい
る患者さまに対して実施
 リハ担当者が困っているケースを中心に、
シーティング係が主導の基、身体評価を実施
し、車椅子上で表現をしている
現在の課題(私見)
・工夫はしているが、備品のみでは十分な対応が難しいことがある
・身体機能・能力の変化に即座に対応ができない場合がある
院内車椅子のレンタル制の導入
現在、業者と検討中(身を削る対応)
必要な製品が充分あるわけではない
今後も考えて、全ての身体寸法や身体機能に対応できる備品を
全て揃えることは、財源的にも在庫管理的にも現実的ではない
それでも全ての製品を扱うことができない
各地方自治体レベルで全ての製品を取り揃え、
各施設がレンタルできるようになると嬉しい
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現在の課題(私見)
・車椅子乗車の頻度や乗車時間の確保が難しい
院内スタッフへの啓蒙活動
・移乗方法の伝達
・褥瘡治療・予防のシーティング など
患者のために病棟へ訴えることができるような、
リハスタッフの実力の向上は必要
定山渓シーティング研究会の発足
病棟の慢性的なマンパワー不足
適切なシーティング治療を行うため、次の在宅や施設へ
つなげるために、この解消が必要ではないか
おわりに
 当院のシーティングの状況について報告した
 現状においても、シーティングで多くの患者が離床でき
、ADLの拡大、情意面への影響、褥瘡の治療、生活方
法の選択の拡大などを実施することができる
 しかし、様々な問題点がいまだ存在し、 身を削る対応を
含め改善を図っている
 様々な有効な車椅子を病院内から使用でき、適切なシ
ーティングができるシステムが必要ではないか
 現在、我々は「北海道で当たり前にシーティングが行わ
れる」ことを目標に北海道シーティング研究会を発足予
定である
 多くの方がシーティングで救われるような取り組みを今
後も行っていきたい
19
永生会法人本部 リハビリ統括本部 作業療法統括士長
永生クリニック リハビリテーション科 課長代理
岩谷清一 (作業療法士)
永生病院の医療療養病棟
でのシーティング
日本車椅子シーティング財団 フォーラム・ディスカッション
医療療養病棟でのシーティングを考える
2016.10.10
アルカディア市ヶ谷
内 容
1.当法人と当院の紹介
2.当院での医療療養病棟の離床状況
3.医療療養病棟でのシーティングの取り組み
4.重度障害者の在宅支援
5.シーティングに関する取り組みの普及に向けて
20
シーティングに関する主な取り組み
• 2003年〜開始
• 患者の身体機能・生活環境に応じた
座位姿勢を提供。
• 院内外のシーティングの窓口
シーティング
チーム
• 2002年〜開始
• 多職種による褥瘡予防・治療介入
褥瘡対策
委員会
• 2011年〜開始
• 車いすやベッド等の福祉用具の管理
• 院長、看護部、リハ部、購買部、施設
管理部
福祉用具
管理委員会
当院での医療療養病棟の離床状況(2016.3)
0% 20% 40% 60% 80% 100%



11.1% 19.4% 69.4%
患者数:98名 離床者:73名 車椅子利用者:72名
Hofferの座位能力分類
0% 20% 40% 60% 80% 100%
標準型自走
標準型介助
モジュラー
ティルト・リク
リクライニング
その他
使用している車椅子の種類
22.2% 11.1% 54.2% 11.1%
1.4%
21
離床による褥瘡治癒の促進と
活動・参加に繋げる
計画の立案と実施
褥瘡の治癒と活動・参加の獲得
座骨部以外に多発性の褥瘡を
有する患者
病棟スタッフ シーティング・
コンサルタント
褥瘡対策
委 員 会
事例紹介
褥瘡に関するシーティングの介入
・ シーティングに必要な評価(身体評価や身体寸法の測定)
・ 車いすやクッションの適合とその他の環境調整
・ 移乗方法の設定
・ 車いす上や移乗時の除圧動作訓練
・ 目標とする活動や参加に向けた訓練
・ 病棟スタッフへの介助方法の伝達
・ 病棟スタッフとの離床時間や離床回数の設定
・ 家族への介助方法の指導 等
月13単位の制限の中でのリハビリ介入では困難
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シーティングに関するアセスメント表
<アセスメントシートの主な内容>
● 基本情報
● 本人・家族・リハビリ担当者等からの希望
● 現在の椅子・車いす使用時の状況と問題

● マット評価と身体寸法の計測
● シーティングの目標
● 選択した用具と調整
マット評価には療法士2人、介入時間60分程度が必要
シーティングチームの介入場面
外来リハ、訪問リハ、ショートステイ
● 二次障害の予防
● 現状維持と変化時の医学的
な対応
● 能動的な座位保持の獲得
● 福祉用具の利用
● 情報提供
● 家族へのケア
● 制度・サービスの利用










能動的な座位保持を獲得することから
2次障害の予防や活動・参加に繋がっていく
在宅支援
(在


















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• シーティングに関する卒前教育に格差がある。
• シーティング技術を提供できる療法士が不足している。
• 「ベッド」や「歩行」には関心が高いが、
「椅子」や「座ること」に対しては問題意識が低い。
• 施設に車椅子関連の用具が十分に整備されていない。
• シーティングの取り組みに対する報酬がない。
• シーティングに関する取り組みをしなくても責任を追及さ
れない。
なぜシーティング技術が普及しないのか
活動・参加に繋がる離床を普及するには
● 医療・介護従事者をはじめ、国民に対する
シーティング技術の必要性の普及
● 卒前教育の質の向上と均一化
● シーティングの取り組みに対する報酬の導入
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フォーラムディスカッション
「医療療養病棟でのシーティング」
永生病院医療療養病棟における
シーティング
~看護師・介護士の立場から~
医療法人社団永生会 永生病院 看護部主任 串田真紀
(皮膚・排泄ケア認定看護師)
はじめに
医療療養病棟では、医療区分2.3の患者様が
80%以上であることが定義されています。
その為、重症度が上がり、寝たきり・四肢の
拘縮を認め、ケアが困難になっているケースが
多く褥瘡発生リスクも高い。褥瘡保有者は、
医療区分2となるために、他病院からや在宅か
らの持ち込み褥瘡があります。
このような環境の中で、永生病院、医療療養
病棟でのシーティング環境について報告させて
いただきます。
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医療法人社団永生会 永生病院
●永生病院理念
私たちは地域の皆様の健康に貢献するため、質の高い医療、安全な医療、
分かりやすい医療に努め、ふれあいとやすらぎにあふれた、リハビリ・
マインドのある医療を提供します。
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医療療養病棟の現状
・慢性期重度障害の患者様が多い
・寝たきりになるリスクは高い
・寝たきりになると廃用症候群に
なりやすい
シーティングについてのアンケート調査を
看護師・介護士に実施
寝かせきりを作らない。
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ICF(国際生活機能分類)
・介護者(介護力は?どんな介護?・・) ・その人の暮らしはどうか?
・福祉用具(どんな機能形態?) ・何をしてきて、何をしていて、
何をしたいか?
・経済(いくらまで使えるか?使うか?) ・これからどう生きていくのか?
認知力・不整脈・褥瘡
活動的か非活動的か
活動はどんな内容か・・
褥瘡関連項目に関する指針
2014年度診療
報酬改定より
28
29
総合討論
1. 医療療養病棟での車椅子シーティングが対応できない患者は
 医師:いない。どんな形でも対応できる。リハ関係者の理解ができていない。乗せるこ
とのメリットやトランスファなど技術論を知らないこともある。
 看護:いない。癌性疼痛等は医師の指示のもと。
 リハ:①すべてが対象者。拒否される方もいる。本人・家族の選択。メリット・デメリ
ットの説明が必要。②難しい症例として、内部疾患、座骨部の褥瘡、著名な拘縮や変形、
変形が重度であるとトランスファが困難。認知症がある場合の座ったあとでの対応や
痛みが強い場合。
2. 長時間(日中)使用するためには、どのような知識・技術が必要か(より長時間使うた
めに) =新たに医療療養病棟でシーティングを開始するためには
 医師:永生病院、定山渓病院が進んで有効性をしめす。病院スタッフのシーティングの
実際経験が有効。病院経営に向けたデータがでてくるとよい。
 看護:①看護の業務(学校での実習)場所がベッド中心になっている。シーティング中
での医療・看護業務の限界を見極める。②看護師が行う車椅子クッションのチェックも
必要。
 リハ:①PTOT は身体評価、環境への影響。患者様と車椅子の寸法計測。②他部署との
連携や上司の理解=コミュニケーション、マネージメントの重要性。OTPT は理解が
難しく、逆に看護・介護は理解を得ることが出来た。個人ではなく、チームを作ること
は重要。③車椅子等の機器管理。
3. 医療療養病棟で車椅子に求められる機能
 医師:体温や汗のコントロールができない。車椅子の操作の容易さ。対象者の体重は
40kg 以下になる。アジアへの展開が可能では?
 看護:①テイルトとリクラ、そしてブレーキなどレバーが多い。➡テイルトとリクラが
一体化したレバーがある報告あり。②おむつ交換でベッドに戻らないで対応ができる
機構ができないか。
 リハ:①Hoffer 3 なのでテイルト・リクライニング必要だが、機種によって変わる。②
テイルト、リクラの角度表示。➡現在、開発している報告あり。③頭部支持がサイズが
大きく、大きさの選択ができるように。④ベッドの横付け機能。⑤フットサポートが重
い➡軽く。⑥電動車椅子のバッテリーが無くなるのがわかるとよい。⑦股関節伸展位
で座ることが出来る。
4. 医療療養病棟で車椅子シーティングはどのような効果をもたらすか
30
(医療費の軽減につながるか?)
 医療費:シーティングは退院、在宅復帰が可能であり、入院期間の減少を見込める。褥
瘡の発生の減少を見込める。
 QOL:シーティングによる座位生活による QOL の向上。呼吸障害の方が外に出るこ
とで、睡眠の向上も見込める。
 現在実施している厚生労働省の調査研究事業:シーティングの有効性に期待する。
5. 今後、我々はどのように進むべきか、その課題は
 シーコン:人材育成の重要性。
 看護:教育でのシーティングの重要性。
 財団➡一般への普及。当たり前へ。
 PTOT の卒前への教育。
 診療報酬等の対応。
31